執筆者:岩田幸記(ケイファンアプレイザル株式会社 代表取締役/不動産鑑定士)
不動産の鑑定評価を検討するとき、最初に気になるのが費用です。予算を立てるには、おおよその金額と、金額が決まる仕組みを押さえておく必要があります。
この記事では、鑑定評価の費用の目安、無料の査定との違い、費用を左右する要素、目的に合った依頼の仕方を、不動産鑑定士の立場から解説します。
1. 不動産鑑定の費用の目安
戸建住宅用地の土地のみであれば、鑑定評価は30万円(税抜)からが目安です。当社の報酬の目安は次のとおりです。
| 対象 | 鑑定評価(税抜) | 価格調査(税抜) |
| 土地のみ(戸建住宅用地) | 30万円~ | 25万円~ |
| 土地および建物(戸建住宅) | 40万円~ | 35万円~ |
| 大規模工場 | 60万円~ | 50万円~ |
| 賃貸収益物件(1棟) | 60万円~ | 50万円~ |
| 継続賃料(地代・家賃の改定) | 80万円~ | 65万円~ |
表の金額は下限の目安です。実際の報酬は、物件の規模、権利関係、評価の目的、スケジュールによって変わります。区分所有建物(マンションの1室など)、借地権・底地など、表にない対象不動産は個別にお見積もりします。
価格調査は、現地調査を行いつつ、鑑定評価の手続きの一部を簡略化した調査です。どちらを選ぶべきかは「4. 目的別:鑑定評価と価格調査のどちらを選ぶか」で説明します。机上調査、セカンドオピニオン、マーケットレポートなども、個別にお見積もりします。
2. 不動産会社の無料査定との違い
「不動産会社に頼めば無料で価格を出してもらえるのに、なぜ鑑定評価には費用がかかるのか」というご質問をよくいただきます。両者は、目的も使い道も異なります。
| 項目 | 不動産会社の無料査定 | 不動産鑑定士による鑑定評価 |
| 目的 | 売却の仲介を受けるための営業活動の一部 | 不動産の適正な価格を判定する |
| 価格の示し方 | 売れそうな見込価格(レンジで示されることが多い) | 適正な価格を一つの金額で示す |
| 算定者・算定の基準 | 不動産会社が独自の方法で算出 | 不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に基づき評価 |
| 第三者への提出 | 根拠資料としては使いにくい | 証明力が高く、税務署、裁判所、監査法人、金融機関などへの説明に使える |
| 費用 | 無料 | 有料 |
売却のおおよその目安を知りたいだけであれば、無料の査定で足りる場合もあります。一方、同族間の売買、相続、会計上の時価、賃料の改定など、価格の妥当性を公的な機関へ説明する必要がある場合は、鑑定評価が必要です。
3. 費用を決める要素
鑑定評価の報酬には、業界で統一された基準がありません。各社が自由に設定しており、同じ物件でも会社によって金額に差が出ます。
当社では、評価の難しさと作業量をもとに報酬を見積もります。主に次の要素を考慮します。
報酬が上がる要素
- 物件の種類・用途:更地、自用の建物、賃貸用の建物では、使う手法も集める資料も異なります。ホテル、老人ホーム、病院等では、事業の分析が加わります。
- 規模:土地の筆数や建物の棟数が多い大規模な物件は、調査と評価の時間がかかります。
- 権利関係:借地権・底地、共有持分、賃貸借契約が絡む物件は、権利の内容を踏まえた分析が必要になります。
- 評価の目的:裁判、税務、会計など、評価の重要性がより大きい目的では、より詳しい分析と説明が必要になります。
- スケジュール:通常より短いスケジュールをご希望の場合は、割増料金がかかります。
- 立地:遠方の物件では、現地調査にかかる日数が増えます。
報酬が下がる要素
- 同一エリアの複数案件:近い場所にある複数の物件をまとめてご依頼いただく場合は、減額を考慮します。
- 再評価:以前に当社で評価した物件を改めて評価する場合は、減額を考慮します。
このため、料金表の金額だけでは正確な予算は立ちません。物件の概要と依頼の目的をお知らせいただき、個別にお見積もりするのが確実です。
4. 目的別:鑑定評価と価格調査のどちらを選ぶか
どちらを選ぶかは、費用より先に「提出先で通用するか」で決まります。提出先が鑑定評価書を求めているのに価格調査を選ぶと、改めて依頼し直すことになり、かえって費用と時間がかかってしまう場合があります。また、価格調査で足りる場面であれば、費用は抑えられます。
| 場面(主な提出先) | 選ばれることが多い成果物 |
| 減損・棚卸資産の評価・時価開示(監査法人) | 金額的重要性が高い物件は鑑定評価、それ以外は価格調査も可 |
| M&A(売買当事者) | 検討段階は価格調査、開示・説明を行う場合は鑑定評価 |
| 同族間売買・相続(監査法人・税務署) | 鑑定評価が多い |
| 賃料改定・立退料(交渉先・裁判所) | 訴訟は鑑定評価、調停・交渉は価格調査も多い |
| 担保(金融機関) | 金額や物件の特殊性に応じて選択 |
| 売買(売買当事者) | 社内検討用として価格調査が多い |
迷ったときは、提出先(監査法人、税務署、裁判所、金融機関など)が何を求めているかを先に確認するのが確実です。当社にご相談いただければ、目的を伺ったうえでどちらが適当かをご提案します。
5. 報酬以外にかかる費用
次の費用は、報酬とは別にご負担いただきます。予算を立てる際は、あわせて見込んでおくと安心です。
- 宿泊を伴う出張の費用:遠方の物件で宿泊が必要な場合の交通費・宿泊費
- 資料の取得費:登記簿等の取得にかかる実費、取引事例取得費、役所での資料取得費等
- 外部専門家の依頼費用:建築図面、開発図面等の外部専門家への依頼費用
- 振込手数料:報酬をお振込みいただく際の手数料
これらが発生するかどうかは、お見積もりの段階でお伝えします。
6. 報酬は評価額に連動しません
当社の報酬は、評価額がいくらになっても変わりません。事前にお見積もりした金額を原則としてそのまま報酬額とします。不測の事態で作業量が大きく増えた場合を除きます。
事務所によっては、評価額に応じて報酬が増える仕組みをとっています。その場合、評価額が出るまで最終的な報酬額がわからないため、予算が立てにくくなります。
報酬が事前に確定していれば、依頼の前に予算を確定でき、社内関係者にも費用を前もって説明することができます。
7. 報酬額だけで依頼先を選ばないために
依頼先を決めるとき、報酬額はわかりやすい判断材料です。ただし、鑑定評価は報酬額だけでなく、品質にも幅があることに注意が必要です。
私はデロイト トーマツ グループに約16年間在籍し、会計監査の立場から多くの鑑定評価書を検証してきました。その経験から、鑑定評価書の品質には相当な幅があると感じています。
品質が低い評価書は、評価の根拠を十分に説明できないことがあります。提出先から説明を求められて対応に時間を取られたり、評価を取り直すことになったりすれば、かえって時間も費用も手間もかかり、結果として費用が高くついてしまうことにもなりかねません。最悪の場合には価格の妥当性を認めてもらうという、本来の目的を果たせないこともありえます。
依頼先を選ぶ際は、報酬額とあわせて、次の点も確かめることをおすすめします。
- 評価の進め方や必要な資料を、見積もりの段階で具体的に説明してくれるか
- 依頼の目的や提出先に応じた評価の経験があるか
- 質問に対して、根拠を示して答えてくれるか
見極めは正直難しいところですが、信頼できる不動産鑑定士に依頼することが、結果として最も価値のある鑑定評価につながると考えています。
8. ご相談から納品・お支払いまでの流れ
鑑定評価書の作成には、通常3~4週間程度をいただいています。報酬のお支払いは、報告書を納品後の翌月末日までです。
- お問い合わせ・ご相談(無料):目的と物件の概要を伺います。当社で案件の概要を確認し、お見積書をお送りします。お見積もりは無料で、正式にご依頼いただくまで費用はかかりません。
- ご依頼・契約の締結:正式にご依頼いただいた場合、契約書(依頼書兼承諾書)の締結を行います。基本的には電子契約でお願いしています。
- 資料のご提示:当社から必要な資料のリストをお送りします。ご用意いただいた資料をもとに、当社で資料の収集・分析と現地調査を行います。
- 報告書の作成・納品:通常3~4週間程度です。物件の規模や状況によっては、より長くかかる場合があります。報告書の署名について、基本的には電子署名で対応させていただいています。
- 報酬のお支払い:報告書を納品後、翌月末日までに銀行振込でお支払いください。振込手数料はご依頼者様のご負担でお願いしています。
スケジュールが決まっている案件は、お早めにご相談ください。急ぎの場合も、状況に応じて対応を検討します。
9. 見積もりを早く正確に出すために
次の情報を最初にお知らせいただくと、見積もりを早く、正確にお出しできます。後から報酬が変わることも防げます。
- 依頼の目的:減損、同族間売買、賃料改定など。提出先が決まっていれば、あわせてお知らせください。
- 希望スケジュール
- 物件の所在地と地図
- 用途と面積:土地・建物それぞれの用途と面積
- 登記情報:登記事項証明書や公図、固定資産税課税明細書など(お手元にあれば)
- 権利関係:借地権、共有、賃貸借契約の有無など
すべてがそろっていなくても構いません。わかる範囲でお知らせいただければ、必要な資料はこちらからご案内します。
10. まとめ
- 戸建住宅用地の土地のみの鑑定評価は、30万円(税抜)からが目安です。
- 価格の妥当性を第三者に説明する必要がある場合は、無料の査定ではなく、不動産鑑定士による鑑定評価が有用です。
- 報酬は物件の種類・規模・権利関係、評価の目的、スケジュールなどによって変わります。同一エリアの複数案件や再評価では減額を考慮します。
- 鑑定評価と価格調査のどちらを選ぶかは、提出先で通用するかどうかで決まります。
- 宿泊出張の費用、登記簿等の取得費、外部専門家への依頼費用、振込手数料は別途です。
- 当社の報酬は評価額に連動せず、見積もり額で基本的には確定します。
- 依頼先は、報酬額だけでなく品質も含めて選ぶことが大切です。
お見積もりと初回のご相談は無料です。依頼の目的、希望スケジュール、物件概要を添えて、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
関連ページ:鑑定評価の流れ・報酬/ご利用場面/よくあるご質問

